
「うちのお寺の1年分のお金のまとめ、って作った方がいいのかな?」
前回は、入ってきたお金が何に使われているのかを見てきました。
今回は少し視点を広げて、お寺のお金を「1年」という流れで見ていきます。
「収支計算書」という、お寺の1年分のお金のまとめは、小さなお寺では「作らなくてもよい」とされています。
作らなくてもよいものですが、作った方がお寺の経営には、いいのでしょうか。
「作らなくてもよい」と言われているけれど
収支計算書とは、1年間の収入と支出を、予算と並べて示した書類です。
収益事業を行っておらず、収入が年8000万円以下のお寺は、この収支計算書の作成が免除されています。
そのため、作成していないお寺も多くあります。
東本願寺が発行している『お寺の会計入門』の14〜15ページ(冊子のページ番号です) には、この免除は「当分の間」のもので、小さなお寺の事務の負担を考えた経過措置であり、作成しないことをすすめているものではない、と説明されています。
経過措置かどうかに関わらず、お寺を続けていくためには、小さなお寺でも、お金の動きを毎月、そして毎年見ておくことが大切だと思います。
そうすることで、お寺の経営が少しずつ見えてきます。
第一歩は、お寺の「1年の区切り」を確認すること
お金の出入りを集計するための「1年間の区切り」を、「会計年度」といいます。
『お寺の会計入門』の19ページには、次のように書かれています。
お寺の運営状況を把握するためには、期間を定め、活動計画を立案し、その実績を明らかにしていくことが必要となります。会計年度は、そのために区切られた一定の期間をいいます。
つまり、会計年度を意識しておくと、お寺の状況がよくわかります。
それが、経営を考えるための第一歩となります。
会計年度は、お寺の法人規則で定められています。
4月1日から翌年3月31日まで、と定めているお寺が多いそうです。
宗派は、7月1日から翌6月30日までとなっています。
まずは、自分のお寺の会計年度がいつからいつまでなのか、確認してみましょう。
実は、私のお寺も、以前は会計年度を意識せずに会計をつけていました。
現在の住職が就任した時に、1年の区切りに合わせて、会計をつけるようになりました。
区切りに合わせて会計をつけると、
「今年はどうだったか」
「去年と比べてどうか」
を、同じものさしで見られるようになります。
毎月の「お金の動き」をふりかえってみる
お寺のお金は、1年を通して一定ではありません。
お盆や報恩講の前後は収入も支出も増えますし、法要の少ない時期もあります。
そこで、月に1度、まず現金出納帳を使って、次の3つのことを見てみましょう。
- その月に入ってきたお金はいくらか
- その月に出ていったお金はいくらか
- 差し引きしていくら残った(足りなかった)か
現金出納帳というと、「お金の出入りが合っているかを確かめるもの」と思われがちです。
もちろんそれも大切ですが、毎月見返すことで、お寺のことを考えるヒントが得られます。
例えば、以前の記事でご紹介した月参り管理表をもとに、現金出納帳にお参りの件数も書いておくと、
「今月は件数が少なかったから、収入も少なめだったんだな」
「この時期は他のお寺のお手伝い(他寺出仕)が多く、収入が増えているんだな」
と、お金と活動のつながりが見えてきます。
数字を毎月見る習慣があると、「いつもと違うな」という小さな気づきが生まれます。
数年分を並べると、お寺の変化が見えてくる
会計年度の終わりには、1年分をまとめて見てみます。
- 収入が多かった時期、少なかった時期はいつか
- 支出が大きかったものは何か
- 1年を通して、お寺のお金は増えたのか、減ったのか
月ごとでは見えなかった「お寺のお金の流れ」が見えてきます。
そして、数年分を並べてみると、もっと多くのことが見えてきます。
私のお寺でも、月参りの件数は大きくは変わっていませんが、数年分を見比べてみると、お布施の金額が時代とともに少しずつ変わってきていることに気づきました。
門徒さんによってお布施の金額はそれぞれ違いますが、件数と合計がわかれば、1件あたりの平均(合計÷件数)を出すことができます。
その平均を毎年並べてみると、数年間の変化が見えてきます。
お布施は門徒さんのお気持ちです。
だからこそ、数字で変化を知り、
「では、お寺としてどうしていこうか」
を考えることが大切になってきます。
これが、お寺の経営を考えるということではないでしょうか。
「数字を見る」ことを、毎月、毎年続けていくと、それがそのまま収支計算書の土台になります。
次の1年を考える「予算」、ふりかえる「決算」
お寺の「予算」「決算」って何だろう、と感じるかもしれません。
でも、考え方はとてもシンプルです。
これからの1年で、「これくらい入って、これくらい使いたい」という見通しを立てること
1年が終わったあとに、「実際はどうだったか」をまとめること
旅行に例えると、
行く前に「交通費と宿代でこのくらい」と考えるのが予算
帰ってから「実際はこれだけかかった」と整理するのが決算 です。
お寺の予算は、お寺の宗教活動の具体的な計画に基づいて作ります。
収支計算書は作成が免除されていますが、予算は免除ではありません。
『お寺の会計入門』の31ページには、
お寺の規模の大小等の理由によって省略できるものではありません。適正な運営を行っていくためにも、予算は必ず作成しましょう。
と記載されています 。
また、責任役員会の議決と総代の同意を得なければなりません。
予算を立てることは、「来年、お寺でどんな活動をしたいか」を、お金の面から考えることでもあります。
まずは、予算を立てる準備として、毎月、毎年の数字をまとめていきましょう。
1年が終わったら、予算と実際の収支を比べて振り返り、その結果を次の年の予算に活かしていけるといいですね。
まとめ
「作らなくてもよい」と言われていても、お寺のお金を毎月、毎年見ていくことは、小さなお寺にとっても、とても大切なことだと思います。
会計年度を確認し、毎月の収支とお参りの件数をふりかえり、数年分を並べると、お寺の変化が見えてきます。
その変化を受けて「お寺としてどうしていくか」を考えることが、お寺の経営を考えることです。
次の1年に向けて、まずは数字をまとめるところから、始めてみましょう。
👉この記事のポイント
📖 参考
東本願寺『お寺の会計入門』
・収支計算書の作成について:冊子14〜15ページ(PDF 17〜18ページ)
・会計年度:冊子19ページ(PDF 22ページ)
・予算:冊子31ページ(PDF 34ページ)
⭐次回予告
次回は、『お寺の予算を立ててみよう』です。
今回は、お寺のお金を「見る」ことの大切さをお伝えしました。
来年の行事や活動を思い浮かべながら、かかるお金と入ってくるお金を、一緒に考えてみましょう。

