
「年末調整」ってなんだろう・・・
前回は、住職の給与から所得税や住民税が差し引かれ、お寺が源泉所得税を税務署へ納付する流れを紹介しました。
毎月給与から差し引いている所得税は、「概算」の税額です。
年末には1年間の給与や各種控除を反映して、本来納めるべき所得税を計算し直します。
これが「年末調整」です。
住職の年末調整は、一般の会社員(サラリーマン)とは少し違う点があります。
多くの住職は、健康保険料や国民年金保険料を給与から差し引かず、自分で支払っているためです。
まずは、給与明細書を見比べながら、その違いを確認してみましょう。
住職とサラリーマンの給与明細書を比べてみる
住職の給与明細書は、次のようなイメージです。
【住職の給与明細書】

給与明細書を見ると、所得税や住民税は差し引かれていますが、健康保険料や年金保険料は差し引かれていません。
一方、サラリーマンの給与明細書は次のようになります。
【サラリーマンの給与明細書】

会社員(サラリーマン)は、健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料が毎月の給与から差し引かれています。
この違いが、住職の年末調整を理解する一番のポイントです。
【住職とサラリーマンの給与明細書の比較】


なぜ住職は社会保険料が引かれていないのか
会社員は、毎月給与から社会保険料が差し引かれるため、その分を考慮して所得税が計算されています。
一方、多くの住職は、国民健康保険料や国民年金保険料を個人で納付しています。
給与明細書には社会保険料の金額が書かれていませんが、実際は個人で支払っているのです。
そのため、年末調整で1年分をまとめて「社会保険料控除」として反映させるのです。
- 国民年金保険料:日本年金機構から毎年10月下旬から11月上旬頃に届く「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」
- 国民健康保険料:自治体から6月頃に届く保険料決定通知書
なお、年末調整で社会保険料控除の対象となるのは、その年の1月から12月までに実際に支払った保険料です。
決定通知書に記載された年間保険料をそのまま記入するのではなく、実際の納付月、納付額を確認して申告しましょう。
年末調整で行うこと
年末調整では、次の内容を反映して、その年に納める所得税を計算し直します。
- 1年間の給与額
- 扶養親族の状況(扶養している家族の人数など)
- 社会保険料控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除 など
【住職の給与と年末調整の流れ】

年末調整によって1年間の所得税が確定すると、上図のとおり、預かりすぎていた所得税は住職へ返金(還付)され、お寺はその残額を税務署に納付します。
そのため、1月に納付する源泉所得税が0円になることもあります。
実際の年末調整では、国税庁が公表している計算シートなどを利用して所得税を計算します。
計算シートは毎年更新されますので、実務で使用する際は最新版をご確認ください。
実務上の注意点
実務では、住職が個人で支払っている社会保険料を、あらかじめ給与から差し引いたものとして毎月の源泉所得税を計算する方法を考えることもあります。
しかし、実際にお金が動くタイミングと給与計算の内容が一致しなくなるため、あまりおすすめできません。
毎月の給与計算は原則どおり行い、社会保険料控除は年末調整でまとめて反映する方が、実務上も分かりやすいです。
忘れずに申告したい控除
年末調整では、社会保険料控除のほかにも、次の控除をうけることができます。
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除(iDeCo=個人型確定拠出年金による老後資金の積立)
控除証明書は毎年秋頃に届きますので、一か所にまとめて保管しておくと、年末調整がスムーズです。
なお、次の2つは年末調整ではなく、確定申告で手続きを行います。
- 医療費控除
- ふるさと納税(寄付金控除)のうち、ワンストップ特例(確定申告なしで寄附金控除を受けられる制度)を利用しない場合
まとめ
住職は社会保険料を個人で納付しているため、年末調整でまとめて社会保険料控除を反映します。
その結果、生じる還付や0円納付は、所得税を正しく精算した結果であり、特別なことではありません。
👉この記事のポイント
⭐次回予告
次回は、「住職の給与と住民税」です。
住民税は前年の所得をもとに市町村が計算し、翌年度の税額が決まります。
住民税の仕組みや、お寺での実務について分かりやすくご紹介します。

