【お寺の経営  ~お寺を未来につなぐ~⑤】お寺の予算を立ててみよう

お金の話
あかり
あかり

「予算って、むずかしそう…。どこから始めたらいいんだろう?」

「予算」と聞くと、少し身構えてしまうかもしれません。

『お寺の会計入門』の31ページには、

「寺の規模の大小等の理由によって省略できるものではありません。適正な運営をおこなっていくためにも、予算は必ず作成しましょう」

と書かれています。

予算は、「来年、お寺でどんな活動をしたいか」を考えながら作るものです。

これまでの記事では、お寺に入ってくるお金、使われているお金、そして1年間のお金の流れを見てきました。

今回はそこから一歩進んで、これからの1年間のお金を、先に見通してみましょう。

入ってくるお金を見積もる

まずは収入です。

お寺の収入には、たとえば次のようなものがあります。

  • 月参り
  • 通夜・葬儀
  • 法事

はじめに、「月参り」の収入から見ていきましょう。

月参りのお布施は、毎月いただく門徒さんのほかに、半年ごとや1年分をまとめてくださる門徒さんもいらっしゃいます。

うちのお寺でも、約1割の方からまとめてお布施をいただいています。

そのため、毎月の月参りの入金額だけで見込みを立てるのではなく、

1年間の月参りの収入と1か月のお参りの件数を見ていくと、より正確になります。

「1年間の収入 ÷ 12か月 ÷ 1か月の件数」で、1件あたりの平均が出せます。

一度出しておくと、門徒さんの数が変わったときにも、その後の予算を考えやすくなります。

ここでは、1件あたり3,500円として見積もってみます。

お寺や地域によって違いますので、自分のお寺の数字で計算してみてください。

ほかの収入も、前年の件数をもとに、次のように見積ります。

収入項目年間の見込み額
月参り378万円(月約90件×3,500円×12か月)
通夜・葬儀120万円(約年10件)
法事36万円(約年12件)
合計534万円

ここで、収入の性質に目を向けてみましょう。

月参りは、件数が大きく変わることが少なく、毎月ほぼ決まった金額が入ってくるので、お寺にとって安定した収入です。

一方、通夜・葬儀や法事は、年によって件数が変わります。

そこで、毎月決まって必要になる住職や坊守などの給与は、月参りの収入を土台にして考える、という方法があります。

見通しの立てやすい収入で、毎月かかる支出を支えるという考え方です。

もちろん、月参りの収入で給与をまかなえるお寺ばかりではありません。

まずは、自分のお寺では月参りの収入でどれくらいまかなえているのかを、数字で見てみましょう。

出ていくお金を書き出す

次は支出です。

このシリーズの③『お寺の「今」を、使いみちから知る』、で見たように、お寺の支出は、大きく次の3つに分けられます。 

①寺院活動費(行事にかかるお金)
②寺院管理費(お寺を維持するお金)
③人件費(住職や坊守などの給与)

この3つに分けて書き出すと、漏れに気づきやすくなります。

なお、寺院活動費のうち行事については、このシリーズの③『お寺の「今」を、使いみちから知る』、でご紹介したとおり、行事ごとに収入と支出をまとめておくのがおすすめです。

今回は、行事ごとの収入と支出は別に管理するものとして、毎月のお寺の運営に関わる収入と支出を中心に見ていきます。

区分支出項目年間の見込み額
人件費住職(月25万円)300万円
人件費坊守(月8万円)96万円
寺院管理費宗派負担金(賦課金など)50万円
寺院管理費会議費・交際費30万円
寺院管理費携帯・ガソリン代30万円
寺院管理費保険料(火災保険など)20万円
寺院管理費修繕費20万円
合計546万円

収入と支出を並べてみる

では、収入と支出を並べてみましょう。

  • 収入の見込み:534万円
  • 支出の見込み:546万円

この例では、収入より支出が12万円多いという結果になりました。

もう少し細かく見てみます。

  • 月参りの収入378万円 → 住職・坊守の給与396万円(18万円足りない)
  • その他の収入156万円(通夜・葬儀、法事 → 寺院管理費150万円(6万円余る) 

差し引きで足りない12万円は、前年からの繰越金(前の年から持ち越したお金)や、見込みより通夜・葬儀が多かったときの収入で補うことになります。 

通夜・葬儀が少ない年は、もっと足りなくなるかもしれません。

1年が始まる前にそれがわかったことが、予算を立てる大きな意味です。

あらかじめ見通しが立っていれば、どう対応するかを早めに考えることができます。

足りないとき、余裕があるとき

足りないとわかったら、まず「なぜ足りなくなるのか」を見てみます。

できれば数年さかのぼって収入を確認し、収入が少しずつ減っているのか、支出が増えているのかを確認します。

お布施は、お寺の側から金額をお願いするものではありません。

収入については「増やす」というより、見込みを今の状況に合わせて考え直すことが大切です。

人件費も、お寺を支える大切な支出です。

月参りの収入が減ったときも、すぐに給与を下げるのではなく、住職や坊守の暮らしを支えるお金であることを大切にしながら、他の支出も含めて全体を確認し、慎重に考えましょう。

反対に、余裕がありそうなときは、将来の修繕に備える金額を増やしたり、必要な設備の更新に向けて準備をしたりすることも考えられます。

そして、門徒さんの数が減ってきているなど、これから収入が増える見込みがないお寺も多いと思います。

これまでと同じ活動を続けているだけでは、収入を維持することも難しい時代になってきました。

だからこそ、数字でお寺の今を知り、早めに考え始めることが大切です。

そのときは、お金の数字だけでなく、お寺の活動そのものも考え直してみましょう。

  • 行事の内容や回数を見直す
  • 月参りや通夜・葬儀を通して、門徒さんとのつながりをより大切にしていく
  • お寺を、地域に開かれた場として活かしていく

このシリーズの①『お寺に「経営」は必要?』でも触れたように、お寺の「これから」の役割は、教えを伝えるだけでなく、人が集う場として広がっています。

まとめ

予算を立てる目的は、収入と支出の数字を合わせることではありません。

これから1年、お寺の活動を続けていくために、どれくらいのお金が必要なのか。

将来の修繕に備える余裕はあるのか。

それを前もって考えておくためのものです。

そして、足りないとわかったときは、お寺の活動のあり方を考えるきっかけにもなります。

まずは収入と支出を項目ごとに分けて、金額を書き出してみましょう。

予算は、お寺のこれからを考える第一歩です。

👉この記事のポイント

  • 予算は、これから1年のお金を先に見通すためのもの
  • 月参りのように毎月ほぼ決まって入る収入は、毎月かかる給与を支える土台になる
  • 支出は「寺院活動費(行事など)」「寺院管理費」「人件費」に分けて書き出すと、漏れに気づきやすい 
  • 収入と支出を並べて、足りないときは「なぜ足りないのか」から考える
  • 収入を維持できないときは、お寺の活動のあり方を考え直すきっかけにする

⭐次回予告

次回は、『お寺のお金の日常から予算までをまとめてみよう』です。

お寺のお金は、日々の管理から予算まで、ひとつの流れでつながっています。

その流れを振り返りながら、お寺のお金をだれと、どう見ていくかを考えてみたいと思います。

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