
「予算って、むずかしそう…。どこから始めたらいいんだろう?」
「予算」と聞くと、少し身構えてしまうかもしれません。
『お寺の会計入門』の31ページには、
「寺の規模の大小等の理由によって省略できるものではありません。適正な運営をおこなっていくためにも、予算は必ず作成しましょう」
と書かれています。
予算は、「来年、お寺でどんな活動をしたいか」を考えながら作るものです。
これまでの記事では、お寺に入ってくるお金、使われているお金、そして1年間のお金の流れを見てきました。
今回はそこから一歩進んで、これからの1年間のお金を、先に見通してみましょう。
入ってくるお金を見積もる
まずは収入です。
お寺の収入には、たとえば次のようなものがあります。
- 月参り
- 通夜・葬儀
- 法事
はじめに、「月参り」の収入から見ていきましょう。
月参りのお布施は、毎月いただく門徒さんのほかに、半年ごとや1年分をまとめてくださる門徒さんもいらっしゃいます。
うちのお寺でも、約1割の方からまとめてお布施をいただいています。
そのため、毎月の月参りの入金額だけで見込みを立てるのではなく、
1年間の月参りの収入と1か月のお参りの件数を見ていくと、より正確になります。
「1年間の収入 ÷ 12か月 ÷ 1か月の件数」で、1件あたりの平均が出せます。
一度出しておくと、門徒さんの数が変わったときにも、その後の予算を考えやすくなります。
ここでは、1件あたり3,500円として見積もってみます。
お寺や地域によって違いますので、自分のお寺の数字で計算してみてください。
ほかの収入も、前年の件数をもとに、次のように見積ります。
| 収入項目 | 年間の見込み額 |
| 月参り | 378万円(月約90件×3,500円×12か月) |
| 通夜・葬儀 | 120万円(約年10件) |
| 法事 | 36万円(約年12件) |
| 合計 | 534万円 |
ここで、収入の性質に目を向けてみましょう。
月参りは、件数が大きく変わることが少なく、毎月ほぼ決まった金額が入ってくるので、お寺にとって安定した収入です。
一方、通夜・葬儀や法事は、年によって件数が変わります。
そこで、毎月決まって必要になる住職や坊守などの給与は、月参りの収入を土台にして考える、という方法があります。
見通しの立てやすい収入で、毎月かかる支出を支えるという考え方です。
もちろん、月参りの収入で給与をまかなえるお寺ばかりではありません。
まずは、自分のお寺では月参りの収入でどれくらいまかなえているのかを、数字で見てみましょう。
出ていくお金を書き出す
次は支出です。
このシリーズの③『お寺の「今」を、使いみちから知る』、で見たように、お寺の支出は、大きく次の3つに分けられます。
①寺院活動費(行事にかかるお金)
②寺院管理費(お寺を維持するお金)
③人件費(住職や坊守などの給与)
この3つに分けて書き出すと、漏れに気づきやすくなります。
なお、寺院活動費のうち行事については、このシリーズの③『お寺の「今」を、使いみちから知る』、でご紹介したとおり、行事ごとに収入と支出をまとめておくのがおすすめです。
今回は、行事ごとの収入と支出は別に管理するものとして、毎月のお寺の運営に関わる収入と支出を中心に見ていきます。
| 区分 | 支出項目 | 年間の見込み額 |
| 人件費 | 住職(月25万円) | 300万円 |
| 人件費 | 坊守(月8万円) | 96万円 |
| 寺院管理費 | 宗派負担金(賦課金など) | 50万円 |
| 寺院管理費 | 会議費・交際費 | 30万円 |
| 寺院管理費 | 携帯・ガソリン代 | 30万円 |
| 寺院管理費 | 保険料(火災保険など) | 20万円 |
| 寺院管理費 | 修繕費 | 20万円 |
| 合計 | 546万円 |
収入と支出を並べてみる
では、収入と支出を並べてみましょう。
- 収入の見込み:534万円
- 支出の見込み:546万円
この例では、収入より支出が12万円多いという結果になりました。
もう少し細かく見てみます。
- 月参りの収入378万円 → 住職・坊守の給与396万円(18万円足りない)
- その他の収入156万円(通夜・葬儀、法事 → 寺院管理費150万円(6万円余る)
差し引きで足りない12万円は、前年からの繰越金(前の年から持ち越したお金)や、見込みより通夜・葬儀が多かったときの収入で補うことになります。
通夜・葬儀が少ない年は、もっと足りなくなるかもしれません。
1年が始まる前にそれがわかったことが、予算を立てる大きな意味です。
あらかじめ見通しが立っていれば、どう対応するかを早めに考えることができます。
足りないとき、余裕があるとき
足りないとわかったら、まず「なぜ足りなくなるのか」を見てみます。
できれば数年さかのぼって収入を確認し、収入が少しずつ減っているのか、支出が増えているのかを確認します。
お布施は、お寺の側から金額をお願いするものではありません。
収入については「増やす」というより、見込みを今の状況に合わせて考え直すことが大切です。
人件費も、お寺を支える大切な支出です。
月参りの収入が減ったときも、すぐに給与を下げるのではなく、住職や坊守の暮らしを支えるお金であることを大切にしながら、他の支出も含めて全体を確認し、慎重に考えましょう。
反対に、余裕がありそうなときは、将来の修繕に備える金額を増やしたり、必要な設備の更新に向けて準備をしたりすることも考えられます。
そして、門徒さんの数が減ってきているなど、これから収入が増える見込みがないお寺も多いと思います。
これまでと同じ活動を続けているだけでは、収入を維持することも難しい時代になってきました。
だからこそ、数字でお寺の今を知り、早めに考え始めることが大切です。
そのときは、お金の数字だけでなく、お寺の活動そのものも考え直してみましょう。
- 行事の内容や回数を見直す
- 月参りや通夜・葬儀を通して、門徒さんとのつながりをより大切にしていく
- お寺を、地域に開かれた場として活かしていく
このシリーズの①『お寺に「経営」は必要?』でも触れたように、お寺の「これから」の役割は、教えを伝えるだけでなく、人が集う場として広がっています。
まとめ
予算を立てる目的は、収入と支出の数字を合わせることではありません。
これから1年、お寺の活動を続けていくために、どれくらいのお金が必要なのか。
将来の修繕に備える余裕はあるのか。
それを前もって考えておくためのものです。
そして、足りないとわかったときは、お寺の活動のあり方を考えるきっかけにもなります。
まずは収入と支出を項目ごとに分けて、金額を書き出してみましょう。
予算は、お寺のこれからを考える第一歩です。
👉この記事のポイント
⭐次回予告
次回は、『お寺のお金の日常から予算までをまとめてみよう』です。
お寺のお金は、日々の管理から予算まで、ひとつの流れでつながっています。
その流れを振り返りながら、お寺のお金をだれと、どう見ていくかを考えてみたいと思います。

