月給25万円で、住職の手取りは184,357円、会社員は192,840円。
同じ給与でも、これだけの差が生まれます。

この差って何だったかな~?
このシリーズでは、住職の給与にまつわるお金のしくみを、所得税、年末調整、住民税、国民健康保険料、国民年金保険料と、一つずつ見てきました。
それは、給与明細の見直しをすすめるためではありません。
お寺を経営していくうえで、住職や寺族自身の給与について最低限知っておくことが、お寺のお金全体を考えるきっかけになる、と思ったからです。
最終回となる今回は、これまでの内容を一度つなげて整理し、改めて「住職の給与」について考えてみたいと思います。
給与明細で振り返ってみると
まずは、これまで見てきた内容を、実際の給与明細という形で確認してみます。
基本給が25万円の場合で考えてみましょう。
まずは、住職の場合。
給与明細書(住職)
令和8年8月分
支給日:令和8年8月25日
| 氏 名 | |
| 扶養人数 | 0人 |
| 支給 | |
|---|---|
| 項 目 | 金 額 |
| 基本給(役員報酬) | 250,000円 |
| 支給額合計 | 250,000円 |
| 控除 | |
|---|---|
| 項 目 | 金 額 |
| 所得税 | 6,110円 |
| 住民税 | 15,000円 |
| 健康保険料 | 26,613円 |
| 国民年金保険料 | 17,920円 |
| 雇用保険料 | ー |
| 控除額合計 | 65,643円 |
| 差引支給額(手取り額) | 184,357円 |
備考※ 健康保険料・国民年金保険料は、住職ご自身が個人で納付されている金額を給与から参考として差し引いて計算しています。実際には給与から引くのではなく、個人で納付するため、年末調整の際に社会保険料控除として申告します。
※ 住民税額は、前年度の所得等に基づき決定されるため、金額は年度ごとにより異なります。
住職は健康保険料と国民年金保険料を自分で納めています。
給与から所得税・住民税などを差し引き、さらに健康保険料と国民年金保険料を納めると、実際に生活に使えるお金は184,357円となりました。
では、同じ25万円の給与で、会社員の場合はどうでしょう。
給与明細書(サラリーマン)
令和8年8月分
支給日:令和8年8月25日
| 氏 名 | |
| 扶養人数 | 0人 |
| 支給 | |
|---|---|
| 項 目 | 金 額 |
| 基本給 | 250,000円 |
| 支給額合計 | 250,000円 |
| 控除 | |
|---|---|
| 項 目 | 金 額 |
| 所得税 | 6,110円 |
| 住民税 | 15,000円 |
| 健康保険料 | 12,500円 |
| 厚生年金保険料 | 22,800円 |
| 雇用保険料 | 750円 |
| 控除額合計 | 57,160円 |
| 差引支給額(手取り額) | 192,840円 |
備考※ 住民税額は、前年度の所得等に基づき決定されるため、金額は年度により異なります。
会社員の場合の手取り額は、192,840円。
同じ25万円の給与でも、実際に生活に使えるお金には差があります。
この差の大きな理由の一つが、健康保険や年金の負担の仕組みです。
会社員の場合、健康保険料と厚生年金保険料は、原則として会社と本人が折半して負担します。
| 住職 | 会社員 | |
|---|---|---|
| 給与から引かれるもの | 所得税・住民税など | 所得税・住民税・健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料など |
| 自分で納めるもの | 国民健康保険料・国民年金保険料 | 原則なし |
※住職であっても、勤務形態や寺院との関係によって加入する社会保険が異なる場合があります。また、住民税は給与から納める「特別徴収」と、自分で納める「普通徴収」があります。ここでは、このシリーズで扱ってきたケースをもとに整理しています。
こうして見てみると、これまで学んできた税金や保険料は、単なる制度の知識ではありません。
住職や寺族が生活していくために、実際に必要なお金を知るための知識なのです。
会社員の給与水準を知る
住職の給与は、会社員のように「平均年収○○万円」と全国一律で比較できる公的な統計がありません。
お寺の規模や地域、門徒数、法務の件数、兼業の有無などによって、住職の収入には大きな違いがあるからです。
そこで、一つの目安として会社員の給与を見てみます。
<会社員の年齢階層別平均給与>

住職の給与と比べてみてどうでしょう。
もちろん、住職と会社員をそのまま比較することはできません。
それでも、同じ年代の人がどのくらいの給与を得ているのかを知ることは、自分のお寺の給与を考える一つの材料になります。
「お寺だから、このくらいで仕方がない」と最初から決めてしまうのではなく、
- 住職や寺族が生活していくには、いくら必要なのか
- 将来、お寺を継ぐ人にとって無理のない給与なのか
- 税金や保険料まで含めると、実際の負担はどのくらいなのか
- 将来の退職や老後まで考えたときに、今の給与で十分なのか
こうしたことを、一度考えてみることが大切なのではないでしょうか。
お寺の収入が減ったとき、給与を減らしていませんか?
お寺の収入が減ったとき、まず住職の給与を減らして対応しようとしていませんか。
もちろん、経営状況によっては給与の見直しが必要になることもあります。
ただ、給与とは、住職や寺族が、お寺を運営していくために働いたことに対する人件費です。
お寺を継ぐということは、仕事だけを引き継ぐのではありません。
生活そのものを、お寺の仕事とともに成り立たせていかなければなりません。
だからこそ、
「お寺を続けていくために、どのくらいの人件費が必要なのか」
と考えることが大切になってきます。
坊守についても同じです。
会計、事務、門徒への対応、行事の準備、清掃、来客対応など、お寺によってさまざまな仕事があります。
「家族だから」という理由だけで無償にするのではなく、どのような仕事をしているのかを整理し、それに見合った給与を考えてみる。
それは、坊守のためだけでなく、お寺の仕事をきちんと「仕事」として捉えることにもつながります。
まず必要な人件費を考える。
そして、人件費を含めて、お寺には年間どのくらいの収入が必要なのかを考える。
そうすると、「給与をいくらにするか」という話が、「お寺をどう経営していくか」という話につながっていきます。
寺族こそ、お金について知っておきたい
所得税や住民税、健康保険料、年金について一つずつ見てきたのは、給与明細を見直すためではありません。
お寺を経営していくうえで、寺族自身がお金について知っておくことが大切だからです。
会社員であれば、税金や社会保険について会社が手続きをしてくれることも多くあります。
一方、お寺では、住職や寺族の生活に関わるお金だけでなく、建物の維持費、修繕費、行事、将来の後継者など、さまざまなお金について自分たちで考えていかなければなりません。
だからこそ、
「自分たちのお寺のお金なのだから、まずは知ってみよう」
という気持ちが大切なのだと思います。
難しい制度をすべて理解する必要はありません。
まずは、知ること。
そして、寺族同士で話してみること。
そこから、お寺のお金を考える力が少しずつ身についていくのではないでしょうか。
まとめ
住職や寺族が安心して暮らすには、どのくらいのお金が必要なのか。
その給与を支払いながら、お寺を続けていくには、どのくらいの収入が必要なのか。
ここまで考えると、「住職の給与」は、単なる個人の収入の話ではなく、お寺の経営の話になってきます。
そして、お寺の経営を考えるためには、まず寺族自身がお金について知ることが大切です。
住職や寺族の給与を考えることは、お寺の未来を考えること。
お金について「わからない」で終わらせず、少しずつでも知っていきたい。
私自身も、まだまだ勉強中です。
だからこそ、これからも寺族同士で、お寺のお金について一緒に考え、学んでいけたらいいなと思います。
👉この記事のポイント
【お寺のお金~お寺を支える基本~】のシリーズを読んでいただき、ありがとうございました。
このシリーズでは、住職の給与を入り口に、税金、保険、年金など、お寺で働く人に関わるお金について、会社員との比較をしながら見てきました。
このシリーズが、みなさまのお寺や寺族同士で「お金について話してみよう」と思っていただくきっかけになれば嬉しく思います。
⭐次回予告
次のシリーズは、『お寺の経営 ~お寺を未来につなぐ~』が始まります。
お寺の現状を数字で知り、予算や決算、長期・中期の計画を考えながら、これからのお寺をどうつないでいくか、一緒に考えていきたいと思います。

