数年前のコロナ禍は、お寺にとっても大きな転機となる出来事でした。
人と会うことが制限され、月参りの件数が減り、行事も中止になりました。
それまで当たり前だった日常が、大きく変わりました。
私の寺でも収入が大きく変わり、先の見えない不安を感じました。

「このままお寺を続けていけるだろうか」
「もしまた同じことが数年後に起きたら・・・」
多くの業種で支給された持続化給付金ですが、宗教法人は対象外となり、不安はさらに大きくなりました。
そんな思いの中で気づいたのが、
お寺も“経営”を考えることが大切なのではないか
ということでした。
これまで「収入」や「働き方」について見てきましたが、今回はもう一歩進んで、お寺を続けていくための“経営”について考えてみたいと思います。
お寺にどれくらいの備えが必要か
コロナの時期に、あらためて考えたことがあります。
お寺として、どれくらいの預貯金があれば安心なのか
収入が減る中でお寺の残高が減っていき、所得税の「延納」を申請しました。
延納とは・・・税金の支払いを一定期間待ってもらう制度
制度に助けられた一方で、
「そもそももう少し備えがあれば…」と感じたのも正直なところです。
さらに、お寺ならではの特徴として、
現金で動く場面が多い(現金商売)
という点があります。
特に強く感じたのが、前住職の葬儀のときでした。
一般家庭の葬儀とは違い、
・参列していただく僧侶の人数が多い
・その分お布施の額も大きくなる
という特徴があります。
お香典としての収入はあるものの、それよりも前に現金を用意しておく必要がある
そのため、手元に資金がないと対応できないことになります。
実際に私の寺でも、前住職が亡くなった際、お寺の通帳の残高がぎりぎりの状態になりました。
あとから振り返ると、
「必要な金額の備えがあれば…」と感じた出来事でした。
生命保険で備える方法もありますが、
・葬儀は1週間ほどで行われることが多い
・保険金の受け取りが間に合わない場合もある
という現実があります。
だからこそ、
すぐに動かせる現金をお寺に残しておくことがとても大切です
- 給与の半年〜1年分
- + 突発的な支出に備える資金
このくらいあると安心できるかと思います。
収支計算書で「見える化」する
収支計算書とは・・・1年間の収入と支出、残りをまとめたもの
日々の帳簿はつけていても、全体としてどうなっているのか、どれくらい残せているのか、は見えていないことも多いです。
年間収入が8000万円以上の宗教法人は、収支計算書の作成が必須ですが、
それ以下のお寺でも、経営を考える上ではとても有効です。
通帳を見れば、今いくら残っているかは分かります。
しかし、それだけでは
・なぜ増えたのか、減ったのか
・このままの状態で大丈夫なのか
・今後も同じように残していけるのか
といったことまでは見えてきません。
通帳は「今の残高」
収支計算書は「お金の流れ」
収支計算書を作ることで、
・どれくらい余裕があるのか
・支出に無理がないか
・備えが足りているのか
を判断できるようになります。
小さな一歩から始める
「経営」と聞くと難しく感じますが、特別なことをする必要はありません。
まずはここから、
・1ヶ月の収支をまとめる
・1年で振り返る
最近では、レシートを撮影して自動入力ができるお寺向けの会計アプリなどもあり、以前より取り組みやすくなっています。
真宗大谷派(東本願寺)が発行している『お寺の会計入門』という本もあります。
基礎から解説されており、初めての方におすすめです。
さらに、
・檀家名簿
・お参りの予定管理
を寺族で共有できると、”経営”がより実践しやすくなります。
「住職の手帳だけに頼る管理」には大きなリスクがあります。私の寺でもまだできていませんが、少しずつでも共有できる形にしていきたいですね。
「考える経営」へ
・収支を把握する
・情報を整理する
・寺族で共有する
・これからを見据えて計画する
こうした1つ1つの積み重ねが、お寺の未来を支えていきます。
コロナ禍を経験した今がまさに、見直しのとき。できることから少しずつ変えていきたいですね。
まとめ
お寺の経営とは、特別なことではなく、お寺を続けていくための工夫です。
コロナ禍をきっかけに、お寺も「備え」を考えることの大切さに気付かされました。
収入が減ることもあれば、急な支出が必要になることもあります。
- お寺は現金で動く場面が多く、一般家庭とは違う備えが必要
- 今の状況を知り、これからに備えることがお寺の経営ではとても大切
- 収支計算書の作成が有効
👉この記事のポイント
🌱 まずは一度、1年分の収支を振り返ることから始めてみてはいかがでしょうか。
⭐次回予告
次回は、「お寺の後継者はどう決まるの?」です。
これまで当たり前だった形が変わりつつある今、お寺はどのように受け継がれていくのでしょうか。
現在多くのお寺が抱えているテーマについてまとめてみたいと思います。

